2025

幼いままの君で死んでくれ

おぼろげに昇る月 街灯に集う虫たち
夜半過ぎに降る雨 国道に寝転ぶ星
夕立ちに旅立とう 五線譜の轍に沿って
息継ぎもできずに 重い足をただ引き摺って

同じ旋律を聞いてたはず 君の足音がして
溢れそうな蝉時雨 共に眠りに落ちて

海に流れ着く名のない亡骸 唸る波に揺さぶられて
踏み切りの警報が鳴る 途方に暮れる暇もないのに

憧憬と焦燥の分け目に 声高に叫んで
幼さ故の無謀な夢 白けてしまいそうで

繰り返してゆく日々の連続 価値があるとて 認めたくもない
透明になるまで磨り減った心 夜明けが待ち遠しい

大人になり損ねた どうしようもなくなって
幼いまま死んでいれば 明日の雨も怖くない

同じ空を見上げたはず なのに色薄れてく
窓の向こう側の景色に溺れ 共に風に吹かれて
自分への期待を連れていって 夜に溶け込んでく

Previous
Previous

マンボウの唄

Next
Next

生命保険