2025

生命保険

朝の光が窓を白く染め 雀の声が砕け散り 
冷えたコーヒーの表面にひび割れが走る 思考の糸が宙を漂い
未読のメールは電子の海で沈み ゆらぎ続ける都市の雑音は蝉時雨に溶け 
無数の足跡がアスファルトに刻まれ 消え行く

すれ違った想いをぶつけ合えた頃に
それぞれの過去に因んで描き出せた未来へと続く道

写せないのは 季節の変わり目に さんざめく胸の鼓動 覚えているよ
閉ざされたのは 遠い国の戦争に 取り返しのつかない 露骨な衝動

通勤列車の窓に映る 無表情な仮面の群れが流れ落ちる
スマホの画面に咲き乱れる バーチャルな花びらが現実の埃を被り 
公園の滑り台から放たれる 子供の歓声が時間を歪め
枯れ葉ひとつが重力の糸に ゆっくりと引かれる

振り返るばかりでは何も変えられない
しみったれた感傷を捨てて思いっきり夢を見よう

時計の針で 無限の砂漠を抜け 枕元で響いてる 母の声が
萎れた花が 時間の重さを耐え 朝の光が再び窓を白く染める

泣き出せたのは 校庭の隅っこで 見上げた空の青さ かつての幼い風に吹かれて
祈ってたのは 誓い合った場所にて さようならを交わした 迷子の温度

オルゴール

ねぇ 眠るオルゴール 朽ちていくよね (聞いて ね 聞いて)
さぁ 探しに行きましょう (殺した蝉の音)

屋根の裏 空の下 木々の揺らぎに惑わされ
押し入れにも 鞄の中にも どこにも見つからないかな

そうね私には分かることができないけれど
それでも探したいね 錆びた音色 私だけの

怖がりだからって怖いままでいいと言われても納得は出来ないからね
私 それくらいの覚悟はできているよ

途切れたベースライン 聞こえないふりしても
誰かにバレるよ 隠しても 忘れていても

声を運ぶよ 遠く聞こえて (山を越えて 海も越えていくよ)
リフレインのように 響いて (花束を持っていくから)
死にゆくオルゴール 奏でて

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今日はまだ変わらずにいたい